Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme

Aozora Bunko

第五章

道ぶしん

判官越前守と、心を公なるものに、きびしく固めても、官衣の下は、かれも人間の皮膚、血肉をもつものである以上、あれから二十年後にちかい今日とて、燈下に、これを見て、無情でいられるわけはない。

第五章

道ぶしん

睫毛に支えられている涙が、あやうく、あふれ出て、越前守の頬を、濡らしかけた。

楽翁は、たしかに、越前守の眼にも、それを見た。

――と思った時、かれ自身が、自分の頬をつたわるものに気づいて、あわてて、顔をそむけてしまった。

越前守も、面を横に、懐紙を、そっと使ったが、すぐいつもの彼にもどって、

「楽翁どの――」と、燈下の印籠に、なお眼を落しながら静かにたずねた。

「いったい、この印籠は、どうして、老兄のお手にあるのでございますか」

「それをお質し召されて、お奉行には、如何なされるおつもりか。まず、それから先に、伺わせて下され」

「されば、この印籠の所持者は、越前が、ただ今、詮議中の女賊のひとりです。御承知の五人組強盗のうちに交じっておった若い女の持物ゆえ。……それで、お尋ね申すわけで」

「では……越前どの」と、楽翁は、あいてを正視して、何か、いおうとするらしかったが、唇ばかりわなないて、ことばは洩れて出ないのである。