Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
――けれど、この藪田助八の申し入れは、宮御自身といえど、むげに拒めぬことになっておる」
「藪田様。……どうぞ、おっ母さんに、会わせて下さいませ」
「会いたいか」
「会いたくて会いたくて。夢に見るほど、会いとうございます」
「よし、会わせてやる。……だがお燕、いや采女。会いたいのは、母だけか」
「いいえ」と、采女は、ありのままな、女になって、しゅくしゅく啜り泣いた。
「――まだ見ぬ父親には、もそッと会いたいことであろうが」
「どうぞ、お慈悲に……、そのお父さまにも、会えるように、おはからい下さいませ。そして父と母とが、私の眼のまえで、ただ一度でも……手を握りあって……そして、私の口から、お父さん、おっ母さんと呼ばせてくれたら、私はすぐ死んでもよいと思います。ああ自分も、双親を持った人の子ぞ……と思って、どんなに嬉しかろうと思います」
「望みは、キッとかなえてやる。しかし、柳町の隠れ家でも、何度もいいきかせておいた通り、それにはそち自身がまず、楽翁どのへ誓ったように、堅い堅い決意をもって、その時を、待たねばなるまい。いや、自らその幸福を、剋ちとるほどな覚悟をもってかからねば、むずかしいぞ」