Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
「おかくしでない」と、お島は、また独りで酌いで、独り飲みながら――
「寺侍の大内不伝とかに、茶屋の株を買わせて、すっかりここに、納まっておいでじゃないか。……それにひきかえ、私の末路ッたらありゃしない」
「八丈島へ保養においでだと聞いていたが、その様子じゃ、おおかた島破りという筋だね」
「あんな所で、長生きしてみても仕方がないから、ひと思いに、舞い戻って来たのさ。この世の見おさめに、したい放題な事をして――と、そッちこッちで、手出しをしてみるけれど、十年も島暮しをしていたせいか、むかしのように勘も働かないし、体もしなやかに動けないので、稼ぎはさッぱり上がらないし、厚化粧して、盛り場を歩いても、もうこんな年増には、釣られるような男もない。……ああ、考えると味気ない。女も、四十の声を聞いちゃあ、もう悪事や色気の裏街道じゃ暮せなくなるものだよ。おまえさんも今のうちに、色香も失せた後の自分を、よく考えておいたがいいよ」
その言葉には、女の晩秋におののいている女の真実がこもっていた。酒がいわせる一場の戯言ではなさそうだ。胸いッぱいな自暴と、虚無と、泣きたいような悔いを吐くために、お島は、酔えるだけ酔おうとしているらしいのである。