Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
「そなたの言うことが、わしにはよくわかりませぬ。拙者のこのごろの出先といって、その目的は、そなた存知の通りなれど、出先はやはり今日は東、明日は西、どこときまったことなく江戸の天地を、四角八面に潜り歩いているようなものじゃわい」
「それならよろしうござんすけれど、わたくしのこのごろお見受け申すあなた様は、前のあなた様とは別のお方のようでございます、それが悲しうございます」
「ナニ、拙者が以前とは別な人のようになった……ははあ、そなたの眼に左様に見えますか」
「ええ、ええ、失礼ながら、これまでのあなた様は、どんな艱難にお逢いになっても、お心の底には強いところが確乎としておいでになりましたけれど、このごろは、それがゆらゆらと動いておいであそばすようにばかり、わたくしの眼には見えてなりませんのでございます、お出ましになる時も、帰っておいでになる時も、あなた様のお面にも、お心持にも、おやつれが見えるばかりで、昔のような落着きというものが、一日一日になくなっておいでなさるように見えますのが、わたくしには悲しくてなりませぬ」
と言ってお松は、涙をこぼしました。
その晩はお松は、こし方や行く末のことを考えて、いまさら、人の心の頼みないことを、しみじみと思いわびて眠れませんでした。