Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
三
三
それから三日目の朝のこと、笛吹川の洪水も大部分は引いてしまった荒れあとの岸を、彷徨っている一人の女がありました。
面は固く頭巾で包んだ上に、笠を深くかぶっていましたから、何者とも知ることができません。
岸を彷徨うて何かをしきりに求めている様子であり、或る時はまだ濁っている川の流れをながめて、そこから何か漂い着くものはないかと見ているようであり、或る時はまた岸の石ころや、砂地の間を仔細に見て、そこに埋もれている何物かを探すようにも見えました。
岸を上ってみたり、下ってみたりするこの女の挙動は、外目に見れば、物狂わしいもののようにも見えます。
差出の磯の亀甲橋も水に流されて、橋杭だけが、まだ水に堰かれているところへ来て、女はふと何物をか認めたらしく、あたりにあった竹の小片を取り上げて、岸の水をこちらへと掻き寄せました。掻き寄せたものを手に取って見ると、それは白木の位牌であります。位牌の文字をながめると意外にも、
「悪女大姉」
悸としたお銀様は――この女はお銀様であります――やがて紙を取り出して、この位牌を包んで懐中へ入れましたが、
「こんなものは要らない、わたしはこんなものを探しに来たのではない」