Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
十九
一旦、鐘撞堂新道のお蝶の主人の家へ引取った米友は、それから出直して、どこへ行くともなしに歩きながら、
「どうも、わからねえ」
その面に一抹の暗雲がかかって、しきりに首を傾けながら歩くのです。ついには棒を小脇にかかえたまま、両腕を組んで、
「わからねえ、わからねえ」
やがて辿りついたのは、例の弥勒寺の門前であります。門へ入ろうとする途端に、
「やあ、ムク、ここにいたのか」
出会頭にバッタリと逢ったのは、昨夜柳原の土手で別れたムク犬であります。
「ムク、昨夜、手前なんだっておいらを置いてけぼりにして、どこかへ行っちまったんだ、先廻りをしてこんなところへ来ているとは人が悪いな、人じゃなかった、犬が悪いんだ――だが、お前は良い犬だ」
米友はムク犬の頭を撫でてやりました。ムク犬は米友に従って薬師堂の裏手へ廻ると、そこで米友がピタリと足を留め、
「なるほど、この百日紅の木がいい足場になるんだ、この枝を伝わってああ行くと、塀を躍り越すなんぞは盲目にもできらあな。よし、今日はひとつ、あの枝をぶち落しといてやれ、どうなるか」
板塀の上から枝を出した百日紅の樹を、しきりに睨んでいました。