Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
とあるお寺の門の前へ来て、はじめて駕籠がハタと留まりました。兵馬も足をとどめて物蔭から遠見にしていると、駕籠賃も酒料も無事に交渉が済んで駕籠屋は引返す。駕籠を出た覆面は、お寺の門の中へは入らずに、垣に沿うて横路へ廻る。左がなにがし大名の下屋敷とも思われる大きな塀、右は松並木で、その間に、まばらに見える茅葺の家が、もう一軒も起きているのはありません。茶畑があって、右へ切れる畑道の辻に庚申塚があります。そのとき兵馬は、もうよかろうと思って、後ろから、
「お待ち下さい」
「エ!」
兵馬に呼びかけられて、覆面の武家は悸として立ちどまりました。追いついた兵馬は、
「お待ち下さい」
と言ってわざと、覆面の刀の鐺を取りました。
「どなたでございますな」
覆面の武家は、非常なるきょうふに打たれたようですけれども、その言葉は丁寧で、そうして物優しくありましたから、兵馬はかえって自分の挙動の、あまりになめげであることを恥かしく思うようになりました。そのはずです、兵馬に他の目的があればこそ、我から進んでこんな無礼な振舞をしてみようとはするものの、これらの仕打ちは一種の不良少年か、追剥類似の、ずいぶんたちのよくない挙動と見られても仕方がないのであります。