Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
「だが、やっぱり、わからねえことは、わからねえ」
米友は、百日紅の枝を仰ぎながら、ここまで来ても、やっぱり思案に暮れて、いよいよその面を曇らしています。
実際、このごろ中は、米友の頭では解釈しきれないことが起っているに相違ないのです。それで米友はこのごろ中、毎晩のように、夜中になると刎ね起きて、例の手槍を肩にして外へ飛び出します。飛び出す時の米友の面は、
「ちぇッ、また出し抜かれたな」
という表情で、或る時は町家の軒下をくぐり、或る時は屋根の上を躍り越えたりして、深夜の市中を走ります。たしかに、何者かを追蒐けて出たのだが、その帰り来った時には、いつも呆然自失です。何物をも認めることなくして出かけ、何物をも得るところなくして帰るのです。帰り来ると、がっかりして、囲炉裏の傍に座を構えながら、枕屏風を横目に睨んで、
「ちぇッ」
舌を鳴らして額の皺を深くしながら、火を焚きつけることが例になっているのであります。
昨夜――むしろ今暁のことは例外でありました。今まで、そうして深夜に物を追蒐けて出ても、その当の目的とするものを何もつかまえては帰らなかったように、自分も、夜番にも、辻番にも、尻尾を押えられるようなことはなしにここまで来たが、昨夜はついに、辻番と検視の役人の前に立たねばならなくなりました。