Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
お絹は身の廻りの、ほとんど総ての物を失ってしまいました。借りるだけの信用のある金は借り尽してしまいました。
今夜も、お絹は堪らなくなって、隠しておいた冷酒を茶碗に注いで飲もうとする時に、本邸の方で大きな声で罵るのが聞えます。
それは紛れもなき主人の神尾主膳が、酒乱のために人を罵っているのであります。
それを聞きながらお絹は、また一杯の冷酒を茶碗に注いで、口のところへ持って行ったけれど、それは苦いもののようであります。
「お絹殿、お絹殿」
呂律も廻らない声でお絹の名を呼びながら、庭下駄を穿いてこちらへ来るらしいのは、まさしく酒乱の神尾主膳の声であります。
このごろでは神尾が酒乱になった時には、誰もみな逃げてしまいます。誰も相手にしないで罵るだけ罵らせ、荒れるだけ荒れさせて、その醒める時まで抛っておくのであります。
相手のない酒乱に、拍子抜けのしたらしい神尾主膳は、何を思いついたか、お絹の住む別宅の方へ押しかけて来るらしいのであります。その声を聞くと、お絹は浅ましさに身を震わせました。
幸いにして神尾主膳は境の木戸を開こうとして、その錠の厳しいのにあぐんだものか、とりとめもなき言語を吐き散らした上に引上げてしまったもののようでありました。