Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
た。
不意に夥しい叫喚が耳に近いところで起り、つづいて雷の落つるような音がして、家も畳も一時に震動すると気がついて、手を伸ばして枕許の刀と脇差とを探った時に、手に触れたものはヒヤリとして、しかも手答えの乏しいもの。
「水だ!」
畳の上を水が這っています。
刀と脇差とを抱えて立ち上った時に、水は戸も障子も襖も一時に押破って、この寝室へ滝の如くに乱入しました。
あっという間もなくその水に押し倒された竜之助の姿を見ることができません。
山水の勢いは迅雷の勢いと同じことであります。あっという間に耳を蔽うの隙もありません。
裏の山からこの水を真面に受けたこの家の一部を、メリメリと外から裂いているうちに余の水は、もう軒を浸してしまいました。水が軒を浸す時分には、家の全体が浮き出さない限りはありません。この水は漫々と遠寄せに来る水ではなく、一時にドッと押し寄せた水ですから、土台の腰もまた一時に砕けて、砕けたところを只押しに押したものだから、家はユラユラと動いて流れ出しました。
四辺は滔々たる濁流であります。高い所には高張や炬火が星のように散って、人の怒号が耳を貫きます。