Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
「まさしく陣中みまいだ、この恰好を見て下さい」
彼は雨具をぬぎながら、草鞋ばきの、脛まで泥まみれになった足を見せた。
「およそこうだろうと、見当はつけて来たんだが、まさかこれほどとは思わなかったね、大山街道だなんて、しゃれたようなことをいって、道もくそもありゃあしない、まるっきり泥の海を泳ぐようなものさ」
「なんだってまたこんな降るなかを」
「悪かったですな、降るなかを来たりなんぞして、まあ足を洗わして貰いましょう」
彼は非番を利用して来たのだそうで、その晩は泊っていった。例のとおり、話題をひとやま背負って来た、という感じで、数日まえ、将軍が柳沢邸へわたられ、そこでたちくらみのような発作を起こし(絶対秘密になっているが)、たいへんな騒ぎだったらしい。ということから始め、新鋳の十文銭が不評で、銀相場が狂いだしたとか、深川のなんとかいう僧が、金銅の地蔵を六躰造って、六カ所の寺に安置した、とか、聞くそばから忘れるようなことを、自分では昂奮して話し続け、ふと気がついて、「ああやりきれない、どうしてこうだろう」と首を振り、太息をつき、「少しは黙っていようと思うんだが、どうしてもべらべら饒舌ってしまう、母に云わせると三つの年にひきつけてからこんなになったんだそうだが、ときに、こっちにはなにか面白い話はないかね」