Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
二
千之助もまたそれには答えなかった。なにやらあざ笑うように白い歯をみせ、
「またあとでお眼にかかります」
こう云って向うへ去った。
「なんだいあれは、おそろしくずけずけものを云うじゃないか」
重兵衛が舌打ちをした。半之助はにわかに気が重くなった。若い従弟のつっかかるような態度や、歪んだ、毒のある笑いに、なにやら不吉の予告めいたものを感じたからである。
――ばかな、そんなことがあるわけがないじゃないか。
そう否定してみても、その暗い不快な感じは、水のしみるように、半之助の全身にひろがっていった。まもなく母が呼びに来た。
本堂に移って施主の席につき、読経が始まるとすぐ、松室泰助が、いかにも忙しそうにやって来て、そそくさと母に会釈をし、半之助の耳へ口をよせて囁いた。
「なにぶん急のことで、……すぐに、なるべく早く」
そういうところだけ、わざと隣りの母に聞えるように云った。
半之助は頷きながら、ふと千之助のほうを見ていた。彼は大目付記録所の、望月内記のそばに坐って、なにやら、親しげに、話しかけていた。
二
役所の急用という理由は認められたが、すぐにはぬけだすことができなかった。