Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
四
梢を漏れてくる日の光りが、上から彼女を照らしていた。蒼ずんだ、深く暗い背景のなかで、明るい光りに照らしだされた、彼女の姿は、この世のものならぬ、神秘な彫像ででもあるかのような、つよい印象を、半之助に与えた。
――こちらへ小さな熊の仔が来たのを知らないか。
彼女はこう問いかけ、それから半之助のそばへ近よって来た。
――親にはぐれたらしい、まだごく小さな仔熊が迷っていた、可哀そうだから捉まえて、家で飼ってやろうと思って、さんざん追いまわして来た、すっかり空腹になって、家へ帰るまでがまんができない、もしも悪くなかったら、その御飯を喰べさせて呉れないか。
恥ずかしそうな顔もせずに、自分はみどうの花世という者である、と彼女は云った。
四
朝の残りの味噌汁をかけた、もう冷たい飯を、花世はさもうまそうに、三つも替えて喰べ、そのあいだ、ひっきりなしに饒舌った。
――どこから来たのか、どうしてこんな処にいるのか、家はどこか、名前はなんというのか。
そんな質問はするが、返辞をする隙も与えずに、また自分のお饒舌りを始める。半之助は苦笑しながら、どこまでが本当か、よくわからない話を、温和しく聞いていた。