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Japanische Klassiker mit Furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme

Aozora Bunko

板前の男は、なをに同情し、それが恋になった、なをにも初めての恋で、どちらも温和しい、ひっこみ思案の性分だけに、おもてには出さなかったが、ずいぶんつきつめた仲だったらしい。出獄して来る亭主は、人を斬ったりするような男で、なにをするかわからない。母や弟妹や、寝たきりの父や、小さな子を捨てて、二人だけで逃げるほどの勇気は、かれらにはなかった。

「結局のところ、そうするよりしかたがなかったんだろう、われわれが祝ってやった日からつい二三日して、上げ潮どきに裏の三十間堀へ、身を投げたんだそうだ」

こう云って、重兵衛は大きな欠伸をした。

「死躰を引取りに来た母親も、隙をみて、身を投げようとしたというがね、……なをも、その板前という男もそうだが、貧しい人間というやつは、生きることにこらえ性がない、すぐ閉口して死ぬにはびっくりするよ」

彼はまもなく眠ったが、半之助はなかなか寝つけなかった。板屋根を打つ雨の音を聞きながら、かなりながいこと、じっと天床を眺めていた。

正木は朝食のあと、少し話して帰った。

「また折をみて来るよ、但し秋晴れになってからだ」

「むりに来ることはないさ」