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Japanische Klassiker mit Furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme

Aozora Bunko

――たしかにあのときの娘だ。

半之助はこう思う。天平仏に似た顔だち、上唇の脇にある黒子。それは、あの山村座の茶屋で見た、あの娘に紛れはない。見れば見るほど、その印象は動かしがたいものになる。

――そしてあのときの声も。

青山主馬に、築地の丸茂へつれてゆかれたとき、二ど聞いた、郭公鳥の鳴くような、あの呼び声と同じものであった。

――たしかに同じだった。

しかも、その二つのばあいを、あの珍しい、菱形の紋が、つないでいる。もはや、とうてい偶然の一致とは考えられない、まちがいなく、山村座の茶屋で見、丸茂の裏でその声を聞いた、あの娘である。

それはもう疑う余地がない、と思うのであるが、一方では、どうにもぴったりしない感じが残った。

三人の若者に、全身の汗をぬぐわせていたときの、ひと言も口をきかず、きりっと立った姿勢や、妖しくきらきらする眸子や、そして、どこやら悪徳のほのめくような美しさなど。いま眼の前に見る花世の、少年のように新鮮な、少しもよごれのない姿とは、その差があまりに大きかった。

――たしかにあの娘だ。

――しかしあの娘ではない。

こういう不安定な、どちらとも判断することのできない感じが、どうにも頭から去らないのであった。