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Japanische Klassiker mit Furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme

Aozora Bunko

そうしてそのあいだに、食卓岩の上に一枚の板を置き、筆や硯や、紙や、それから叔父の遺品をとりひろげて、自分の覚書をとった。

江戸をぬけだしてから、すでに八カ月ちかく経っている。

はじめ、韮崎という町に宿を取って、春の来るまで、付近のようすを見てまわった。そこは釜無川の東がわで、川上のほうには、むかし武田勝頼の拠った、新府城の址がある。川に面した断崖の上で、石垣も塁も乱雑たる廃墟だったが、今でも土を掘れば、刀の折れや、焼けた籾などが出る、ということである。

城址からさらに、川上へ遡ると、甲斐駒の連峰が、川を越して、のしかかるほど眼ぢかに、眺められた。彼は叔父の描いた地図と、照らし合せながら、その連峰の南の端によって、甘利山をそれとつきとめ、そのふところの谷や、峡間や、中腹の高原にひらけている、村や、部落の位置を、よく慥かめておいた。

宿は若竹屋といい、主人は文造といって、五十歳ばかりの、躯の小さな、しゃがれ声の男だった、甲府の城下へいって、三年も義太夫浄瑠璃を稽古し、なにがし太夫とかの、名を貰ったそうである。そのためにそんな声になったが、のちになって、師匠の土佐掾というのがくわせ者であり、じつはどこかの馬子あがりの、つまらないような素人だ、ということがわかって、たいへん落胆もし、信用も害したという。