Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
半之助の記憶では、母の部屋か父の居間へゆけば、いつも叔父がいて、退屈そうに寝そべったり、酒を飲んでいたりしたように思う。
兵庫の家は麹町五番町にあり、実の母親と、くみという妻と、千之助という男の子がいた。叔父はそのくみという妻を嫌っていた。詳しいことはわからないが、なにか事情があったのだろう、あるとき叔父が父に向って、あざけるような調子で、こんなふうに云うのを聞いたことがあった。
――あれが黙って坐っているでしょう、するともう娘のように可憐で、浄らかで、いやらしいことなんか塵ほども知らない、といったふうにみえるんですからね、けがらわしいとは思うけれども、憎む気にはなれませんね。
妻だと名はささなかったが、明らかにその人のことを云っていたようだ。例によって笑い顔をしていたが、けがらわしい、というするどい言葉は、幼い半之助にも忘れられないものであった。
遠藤は母の実家であるが、ふしぎに安倍とは往き来がないので、外祖母のことも、従兄弟に当る千之助のことも、半之助はよく知らなかった。しかしくみという叔母の印象は、かなり鮮やかに残っていた。躯の小柄な、色の白い、いつも泣いたあとのような眼つきをした、声のきれいな人であった。