Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
来るまでの事情は、判然とはしないが、おそらく、彼もまた甲府城に拠って、ひと合戦という、夢に憑かれたのであろう。しかしそうではなく、亡き父の兵庫が、この土地で失踪したということに惹かれて、かれらと行を共にしたのかもしれない。いずれにもせよ、彼が登世の事に座して、その破滅のみちづれになったことだけは、事実のようである。
「待った待った」
主馬はこう叫びながら、千之助のほうへ近づいていった。
「そこもとは一つ木の安倍の縁者だろう、南部坂の昌雲寺で会ったことがあるぞ」
「それがどうした」
「刀をひけ、われわれは安倍の友人だ」
「寄るな」千之助は叫び返した、「安倍には恨みがある、きさまたちのしんしゃくも受けぬ、抜け」
抜け、と叫んだとき、千之助は、とつぜん、横へ跳躍した。窮鼠の勢い、という感じで、そちらにいた捕方の者は、わっと左右へ崩れたった。千之助はそれを追うようにみせ、身を翻して、走りだした。
「待て、逃げられはしないぞ」
主馬が喚きながら、捕方の者たちと、追ってゆこうとした。すると平四郎が、「追うな、危ない」と呼び止めた。
それは正に危うい瞬間だった。平四郎の声で、思わずかれらが踏み停ったとき、逃げてゆく千之助の、足の下が揺れ、彼は奇妙な恰好によろめいた。