Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
船頭もすぐ舟の向きを変えたが、少女はまるで気がつかなかった。
「舟をお停めと云ったのに」
こう云いながら、極めて巧みに、舟の上へあがった。
「水の中では舟の影がはっきり見えるから、動いて来ればすぐ逃げてしまうじゃないの」
「乙女さま、これを」
若者は浴衣を取って、すぐに少女の躯を包もうとした。しかし、向うの舟の男たちは、すっかり見てしまったらしい。わっという声をあげ、舟ばたを叩き、つまらない悪口を叫んだ。
少女はきっとふり返った。
「あれは乙女のことを笑っているのか」
彼女はこう云って、若者のさしだす浴衣を押しのけた。
束ねて背へ垂れた髪が、もつれて、胸の一部を掩っていた。そのほかは隠れるところもなくあらわである。胸も腰もまだ固そうだが、すこやかに発達した、柔軟なまるみが、そのためにかえって、神々しくさえみえた。
片手で髪に含んだ水を絞り、片手で(まったく無意識らしい)軽く乳房を押えながら、彼女は釣舟のほうを、怒りの眼で見た。若者はなお、浴衣で彼女を包もうとしながら、「おくにとは違いますから、どうぞ早くおめし下さい、そんな恰好をしていらっしゃると、このあたりでは誰でも笑います」