Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme

Aozora Bunko

蒼生

一

「渡辺悦之進のことか。悦之進なれば、もはや山荘へもどるには及ばん。いとまをつかわすであろう。そう伝えるがよい」

と、老公はかろくいい放して、そこの小障子を内から閉めてしまった。

蒼生

一

ここは街道の側といってもよい近さにある畑の中なので、往還の旅人の眼にはすぐ触れる。

くわしくいえば、尼ヶ崎の城主青山家の領内で、兵庫の坂本村の畠地であるが、すぐ西南四、五町ほどさきに、湊川の流れがあり、遠く延元元年五月の楠木、足利両氏の古戦場としても知れているので、この辺は総じて、

湊川。

で通っている。

芭蕉でなくても、古戦場に立てば、夏草や――の想いはたれも深くする。

八月。まだ残暑であった。

茫々と、草ばかりである。河原のほうから焦けた風がくる。白いほこりをかぶった雑草がうごくたびに、キチキチと青い虫がとぶ。

ぼくっ、ぼくっ……

土をめくる強い鍬の音がする。ひと鍬ごとに、気合いがはいっていた。

「旦那。……旦那にそう働かれると、わしども職人は、煙草やすみもできませんよ。すこし汗でもお拭きなすってください。後生ですから」

石屋の権三郎は、大きな壇石のそばへ、鑿をおいて、顔をこすった。