Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme

Aozora Bunko

五

「――芽は踏め。根は張れ。そう仰っしゃっておられたのでございましたか」

「麦の芽は、領民の芽、わしが在職中は、また退隠の後も、ここの領土は、領主に芽ばかり踏まれている。――不愍と思う。……その心も手伝うていたな」

林助も悦之進も、咄嗟に、面を厳粛にあらためた。馬上の老公の眼は、土と人に対する愛にみちあふれていた。

「百姓も町人も工人もそちたち侍どもも、さだめしこの世をおもしろおかしく、華奢に遊楽に暮したかろう。――世はいま元禄五年、江戸も京も、他領の国々も、なべてそういう風潮の世であるものを。……ひとりわが水戸だけがそうでない。厳として、芽を踏まれておる。それも久しい」

憮然として老公はつぶやいた。

「根に力を蓄え、望みは、永遠の結実に持て。――そう祷るわしの施政が踏みしめて来た領土。ここの領民は可憐しいものたちよ」

五

その時、後から追いかけて来た牧野惣左衛門が、ようやく追いついて、

「ご城下口まで、てまえもお供させていただきます」

と、馬上へ礼儀をしてから、馬のあとに従った。

老公はすぐ振向いて、

「惣左、惣左。鞍わきへ参れ。――わしからの返辞は、聞いたか」