Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
一
独り数寄屋の一室にさっきから長いこと待たされていた客は、無聊のまま普請の木ぐちをながめたり、庭園の善美に見入っていたり、飽くことを知らないふうであった。
床を見れば、東山名物でもありそうな名幅がかかっていた。花器を見れば、砧青磁とおぼしき耳附の瓶に、剪って挿けたばかりのような牡丹のつぼみが笑みを割りかけている。
香炉、蒔絵もの――。また膝のまえに置かれてあるたばこ盆の火入れひとつといい、さりげなく手にとった茶わんまでが、いずれも祥瑞とかなんとかいう名品らしかった。
「どれ見ても、大したもの」
彼には、そういうものを解する数寄があるらしかった。
上流のひとと交わるには、また文化人のあいだに出る話題から埒外におかれないためには、古墨蹟や名画を解し、陶磁を品評し、料理の味覚にあかるく、衣裳にぬけ目なく、能、音曲の嗜みはもとより、和歌をよめば和歌もひとかど、俳諧をかたれば俳諧もわかり、すべてに程よく通じていなければならなかった。
いま、この客をみると、いかにもそうした社交人のあいだにおいて、五分のすきもないほど、ぴったり時勢にあてはまっているさむらいだった。