Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme

Aozora Bunko

「お胸のうち、ひそかに、このお館にも、ご家中へも、お名残りを惜しんでおいで遊ばすような」

「…………」

長年仕えている井上玄桐は、ふとかなしげな眼をそらした。紋太夫も、面を反向けた。けれど、老公の健康にたいするふたりの希いは、正反対なものであった。

ふたりは、相伴って、老公の部屋へ行った。拭き磨いた廊下に、冬日が眩いほどよく映している。その光は、温かい部屋に安座している老公の白髯にまで反射していた。血色もめっきりよい。紋太夫は、あいさつを述べながら疑った。

(どうも、さして、ご老衰ともお見うけされないが……)と。

ゆうべも、一刻あまり、お相手をして、何かと話しこんで帰ったが、今朝も老公は至って機嫌よく、

「紋太夫か。そちの見えるのを、心待ちにしておった。そちならでは、かなわぬ儀もある。ちと相談じゃ、もちっと寄れ」

と、いった。

九

思いもうけぬ相談事であったらしい。まもなく紋太夫は倉皇として老公の居間から退って行った。

けれど悪いことではなかったとみえ、かれの面にはすこしも不安らしさがない。おとといより昨日、きのうよりは今日と、安心がすわっていた。

(――まず、この分ならば)