Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
「きょうの猪を庖丁いたした彦兵衛にございます」
「碁敵の彦兵衛か。彦兵衛もこれへ来い。なぜ、壁の隅などへ、そう恐れ入っておるか」
「いつぞや、帯刀おゆるしの件で、失敗をやりましてから、お咳の声を聞いても、あのように恐れ入ってばかりおるので」
「はははは。困ったわからずやだの。叱られたと思うておるのか」
「ちとお薬がききすぎた嫌いでございます」
「叱言の加減も難しいのう。これ彦兵衛、来ぬか、ここへ来い」
「へい。へい……」
「なぜ閾の外などにおる」
「でも。……はい」
「わしと碁を打つ腹がまえで、もそっと入れ。それ、杯じゃ」
「おそれいりまする」
「あははは。ふるえおる。なぜそう卑下するか。そちのみが、刀をさしておらぬからとて、卑下する理由はすこしもない。武士、百姓、何のちがいがある、ただおのずから職分の礼儀だにあればよいのだ」
「はい、はい。ありがとう存じますことで」
「その卑屈癖がいかんのう。よせ、よせ、米つき螽のような癖は。第一、そういじけては、碁がおもしろうなくなる」
「いえ、碁ばかりは、老公さまであろうと、負けられませぬ」
「その気概で、酒ものめ、交わりもせよ。みなにも、昵懇を乞うがよい」