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Japanische Klassiker mit Furigana

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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme

Aozora Bunko

九

……ごらんなさい、とうとう世上の華奢、淫蕩、贈賄、涜職の風。役人は役人で、下は下で、この国をここ十年か二十年で蝕い腐らしてしまいそうなほど、浅ましい世の有様を」

「…………」

寂然、いつのまにか、老公は眼をつむっている。眠っているのかと、景助は、酔眼をみはったが、そうでもないらしいと見ると、いちだん声をあげて、

「なぜ、私利私欲の賊臣と、国を蝕う世の悪風へ、敢然、闘ってくださらなかったかっ。石にかじりついてでも、副将軍というご位置に、しがみついて下さらなかったか。それまでご信念はお持ち合せがないのでござるか。日本はどうなってもよろしいのでござるかっ。……人見又四郎もそれを哭いた。五郎八も哭いた。この景助も哭きます。……水戸の若ざむらいが泣虫なのは、ご老公、あなた様がお悪いのだっ、あなた様の罪だ」

と、景助もあやうく、泣き声になりかけた。

九

すると――そう遠くではない、ふすま一重かふた間距てたあたりから、琴の音がもれてきた。

「……や、たれが」

「これは、優雅な」

沸いていた酒の座は、急にひそとしてしまった。侃々諤々も、景助や五郎八の悲嘆慷慨も、そこここのすったもんだも、一様に、黙りかえって、十三絃のまろぶ音につれて聞える琴歌にしばし耳をすまし合った。