Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
ベルリンにいる時、政治の話だけはしないでくれ、外人といえどもすぐ連れて行かれて殺される恐れがあるからと、人々に注意を受けたが、モスコウに入れば、写真も写すことが禁ぜられ、手も足ももがれたのと同様な不自由を少からず感じさせられた。人を見れば、右翼か左翼かどちらかだと判ずる観念が、濃厚に全世界にはびこっているのである。人間自由に物を見る観念など、どこにもないという考えは、今は世の通念となってしまった。スペインの争乱など、その観念の争闘であることは、今は誰でも知っていることだが、それにしても旅行者は、何らかの意味でスパイと見られ得る可能が、新しく生じて来たのであるから、この封建思想の錯誤には、何人もまき込まれずにはおられない。かい潜る度に、新しい縄の取手に追いかけられる近代人は、拱手傍観の態度で日を送ることなど、今は夢である。
そこへいくと、日本はまだ自然な、一つの態度が赦されて残っている。つまり、「おけらの唄」という、自分を捨てて他を刺し殺し、総てを無にする奇怪な道場が丹波の山奥の修験場のように、呼吸をつづけているのである。ここへ光線をあてると、野蛮人か文化人か分らぬ様々な顔が、どちらを向いているのでもなく、あぐらをかいてえへらえへらと笑っている。