Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうしゅうきこう

欧洲紀行

横光 利一

Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme

Aozora Bunko

三月二十一日

スエズを通る税金は一船片道五万円。船客全部の船賃が、つまりここの税金で消えてしまう。ここ一つにも問題は山とあるのだ。

少し細かいことを書こうとすると、頭が痛んで来て駄目だ。よほど変調を来していることがペンを持つとはっきりする。

三月二十一日

午後三時、スエズ着。ここで途中下船してカイロへピラミッドを見に行く。一行十四五人。自動車で百哩ほど沙漠の中を疾駆する。道路は京浜より完全だ。五六十哩の速力をつづける。この速力なら石ころ一つあっても車は顛覆するのだ。樹木のない荒涼たる淡褐色の沙漠だが、こんなに茫々とした風景はも早や風景とは云い難い。真赤な夕陽が真正面にかかっている。沙漠に陽が落ちると云う歌があるが、太陽は沙漠に落ちるよりどうしようもないのだ。まるで槍でも突き刺しに行くように太陽に向って驀進する。海ばかり見つけた眼に沙漠は一種の興奮を与えるが、しかし、今度はまたあんまり沙漠ばかりだ。私は初めは驚きつづけた。しかし、だんだん何らの興奮もなくなり、疲労がうまい具合に救ってくれているのに気がついた。

まるまると陽を吸ひ落す沙漠かな

ところが、全く夜になって、沙漠の端に、突然、想像もしなかった大都会が現れた。