Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
五月十八日
真面目な字を書く人だ。牧野信一君も先日自殺したが、二人とも最後に私の逢ったのは私の出発する四日ほど前だった。それも日はそれぞれ一二日違うのだが、逢った場所は揃いも揃って銀座のヱビスビールの前である。それも夜の群衆の中で通りすがりのこととて互に手を上げただけである。二人とも共通に世にも快活な笑顔をし、同じポーズをして通っていった。
私はオーグスト・コント通りの峡谷の中を通る度に、二人の冥福を祈ろうと思う。
五月十八日
樋口、岡本両君とヴァンセンヌの森へ行く。一昨日から続いている暑さが今日もつづく。広い森の中は人でいっぱいだ。人のいない奥深くへ這入って休もうとすると、雑木の中には、あちらにもこちらにも男女の二人づれが横になっている。私たち男三人は森をけがしているのじゃないかと思うほどだ。小さくより固ってただ梢を眺めているのだが、誰も沈んで物云うものもない。樋口君はときどき溜息をもらして早く日本へ帰りたいと云う。岡本君はむっつりして木の葉をむしり取っているばかりだ。私はふとこの森を戯曲の一場面にしたくなってノートを取る。パリー市民の理想は日曜日になると森へ男女で来ることだと云う説も耳にした。