Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうしゅうきこう

欧洲紀行

横光 利一

Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme

Aozora Bunko

三月廿八日

四月四日

四月六日

三月廿八日

晴。マルセイユ出発。巴里へ。

汽車の進行にしたがって繰り拡がって来る田園。私は冷やかに眺めることばかりに努力した。けれども、どうにも美しい。桃杏一時に開く春の木の芽の柔かさ。連り下るなだらかな牧場。点在する風雅な農家。杏の花に包まれたローヌのゆるやかな流れ。――私はこういう恍惚とした風景を見ながら、ふと気がつくと、なお植民地の勃興を考えているのである。

夕暮の六時。巴里着。

四月四日

雨。巴里へ着いてから今日で一週間も立つ。見るべき所は皆見てしまった。しかし、私はここの事は書く気が起らぬ。早く帰ろうと思う。こんな所は人間の住む所じゃない。中には長くいることを競争するものもいるが、愚かなことだ。

巴里について、いろいろの人が、いろんな事を云ったり書いたりした。しかし、それらの人々が、自分の顔がどんなに変ったか誰も云いもしなければ、知りもしない。

四月六日

晴。巴里へ来てから初めての晴天だ。しかし、私の頭の中では、渦が幾つも巻きつづけ、衝突し、崩れ、巻き込み合い、不断に変化をつづけていく。私がひとり部屋に帰り、夜更けて思い浮ぶ風景は、通って来たアラビアの沙漠である。