Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
五月七日
五月八日
五月七日
雨かと思うと噴水の飛沫だ。梨の花は一夜の中に散って了った。もうパリーへ帰ろうと思うがこの宿にいると外へ出る気にもならぬ。終日静かに曇っている。二十幾年この方、水夫をして近海を廻っていたこの家の老爺は、ごほんごほん咳き込みながら、毎日イギリスはこの天気でさと云う。庭に出るとあたり一面の青葉の中に、まだ淡桃色の林檎の花が残っている。スコットランド行はもう思いとまった。
先日パリーのドウムの群集の中で茶を飲んでいたとき、三つ四つ向うのテーブルにいたアメリカの婦人と、ロンドンのピカデリの群集の真ん中でふと出逢った。物も云ったこともないのに向うも覚えていたらしく、にっこり笑いつつハロウと声をかけて行きすぎた。ロンドンの良い印象の一つである。
五月八日
曇った市中を歩いてみる。どこを歩いてどこへ出たのか分らない。重いオーバーを脱いだり着たり五六度もしただけだ。同じような建物の間を歩き疲れるまで歩き、公園らしい青草が見えると立ち停るのだ。何のために街を歩いているのか分らない。今日はパリーへ帰ろうと街を歩く度に思うのだが、宿へ帰ると庭の美しさと家人の質朴さに、また一日と日を延ばす。