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Japanische Klassiker mit Furigana

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おうしゅうきこう

欧洲紀行

横光 利一

Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme

Aozora Bunko

六月十九日

六月十九日

チロルへ出発。ミュンヘン一帯の駅では、プラットフォームで、慎しやかな婦人が、ビールの立飲みをやっている。男は丸坊主が多く、婦人は顔が赧い。このあたり、森林の美しさの一段と増すのは、あながち森自身のせいばかりでもない。

ガルミッシ、パルテンキルヘンを過ぎ、ミッテンワルドの国境に近づくに従って、自然の変化と美しさも絶頂に達する。峨々たる灰藍色の山峰湧くが如し。額にまで迫る雪渓の氾濫。山と云わず、谷と云わず、花満ち溢れた牧場の連続。入れ代り立ち代り現れる、峻峰奇峰の無端の変貌。この世にかかる美しい高原があったのかと歎息するほどだ。しかも、それがどこまでも続くのである。

あざみ、さふらん、黄色な小菊、乾草――大木は花の中から浮き上り、汽車は花の中を割って進む。氷河また花の中に流れ下る所に、先きを揃えた牧場の軟草幾十里となくつづいている。波打つ花の中を自転車に乗った娘が昂然として行く。全山これ大公園だ。この美しさは、行けども行けどもさらに尽きず、沼あり森あり、雪渓のまばゆさ、峰を廻る度に新たに現れ、窓いっぱいに拡がり近づく所、ミッテンワルドという。