Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
五月九日
五月十日
五月九日
どこ一つ見る気も起らずロンドンを発つ。十二時半。ドーバーの上は霧ばかりだ。霧は茫々と際限なく続いた雪原と同じだ。太陽の輝いた青空と雪原の間を、珈琲を飲みつつ飛ぶ。フランスの下界は整然とした方形の群団だが、イギリスの下界は雲形だ。三時にパリーへ着く。何と気楽な都会だろう。初めて家へ帰ったような気持ちになる。私のロンドン行は、パリーを見直すために行ったようなものだ。
一週間見ぬ間に、マロニエの花は咲き切ってしまっている。グランブルヴァールから、サン・マルタンまで歩きつづけ、サンゼリゼーへ引きかえし、飽かず街々を眺め廻した。六月になれば、もう一度ロンドンへ行き、イギリスを見直そうと思う。
五月十日
ロンシャンの競馬を見に行く。ここの競馬は花見遊山に行くのと同じだ。青芝の上に寝転びながら、競馬場で小説を読み耽っている婦人もある。馬券が安く五フランからあるので、狂人沙汰にもならずのどかに半日をすごすことが出来る。帰途、シャンゼリゼーのロンパンで休む。
一面に穂を揃えたマロニエの真白な花の間で、霧を噴き靡かせている噴水。エトワールから下る散歩道は、日曜のこととて、流行の春着の流れ下って来る河だ。