Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

おうしゅうきこう

欧洲紀行

横光 利一

Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme

Aozora Bunko

八月十七日

私はどんなに誇張をしようとも、誇張の威力というもののないところを初めて地上で見た思いに打たれている。

「虚無」

こう云ってみて、私は私の感じていた今までの虚無に顔が赧らんで来るのを覚える。地平線のはるか向うのぼッとした薄明りを見ていると、ラスコオルニコフとソウニャが物も云わずに立っているところが浮んで来る。

日本の虚無というのはある限りの知力で探し廻り、ようやくおのれの馬鹿さに気附くことだが、しかし、ここでは眼のあたり虚無以外には何もないのだ。

ところどころに畑はある。しかし、それも指でひっ痒いたようなものだ。

八月十七日

この茫々としたロシアが軍備を拡張したときの恐ろしさ――しかし、それは不可能だ。人間がこんな広大もない自然を支配出来るものではない。出来たとしたところでただ僅に一本の鉄道だ。ここでは鉄道だけが国である。この鉄道という筋肉が不随意筋を動かしたと仮定しても、それは知れている。私は何も軽蔑しているのではない。自然に対する人間の無力さを感じているのみだ。

時計が正確に午前の九時をさしているとき、列車内の現実は午後の三時ごろである。もう夕刻近いのだ。