Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうしゅうきこう

欧洲紀行

横光 利一

Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme

Aozora Bunko

三月一日

三月二日

三月一日

昨日まではオーバーを着ているものがあったが今日は幾らか暑くなった。入梅ごろだ。印度支那の沖合である。上海以来ほとんど日光を見ない。雲もよくこれほどあるものと思う。海も大きいと思うが雲も大きい。来る日も来る日も海ばかりつづくと旅行をしている感じが起らない。姿を変えない海上ばかりにいるものは、冒険なくしては生き甲斐を感じないのだ。揺れない大きな船の乗組員は、小さな船の船員よりも暈うとの事だ。つまりたまにより大揺れに逢わないからである。サロンの桃の花しだいにこぼれていく。

船中に桃のみめぐる二三日

欧洲航路のマルセイユまで行く船中生活ほど、この世の楽土はまたとないと人々はよく口にする。なるほどそうかもしれない。しかし、何と退屈なことだろう。私は船客や船員達と殆ど友達になってしまったが、船の中には何か足りないものがある。私はいろいろ考えてみたが、それは孤独というものだ。人間は限りもなく贅沢に出来ている。

三月二日

晴天、初めて太陽を見る。印度支那の高い山々が四哩ほど彼方に見える。船中は夏服に変った。もうすぐ赤道にかかるのだが、それにしては涼しい。私はまだ合い着だ。