Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうしゅうきこう

欧洲紀行

横光 利一

Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme

Aozora Bunko

三月二十一日

紅海は今日で終り。明日はピラミッド見物だ。

ヨーロッパから日本へ帰る榛名丸と擦れ違う。船はこの箱根丸と寸分違わぬ。(と船長の言)御安航を祈ると大きく書かれた幟が垂れている。両船はだんだん接近して来る。それぞれ船客達は手に旗を持って振っている。久し振りの日本船なので熱狂して叫び合っているのだが、突然、私の横から「がん張れ。」と向うの船に向って叫んだ者があった。すると、「もう駄目だ。」と頓狂なのが答えて来た。見るまに船は遠ざかって行く。さア、また夕暮の仕度。その後はまた寝る。榛名丸の行衛を見たがもう影も形も見えぬ。

紅き海名のみにすぎぬ夏の空

三月二十一日

晴。毎日、日を忘れてばかりだ。今日は幾日ですかと他人に訊ねても、いつも、さア、という返事が多い。日というものは眼に見えぬ上に、海の中ではどこを掴まえて日を記憶して良いのかこれも分らぬ。しかも、進行している船。

スエズに近づいている。右にシナイ山が見え、左にエジプトが見える。このあたりを通りつつあるときには、頭は聖書の匂いで満ちて来る。樹木のない乳褐色の山々が延々と暁の両岸に連っているきりだ。

モーゼ来りたまはばや朝の星落ちぬ