Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
筋肉の量は精神の量と反比例しているようだ。これが文化というものだ。
夜、夕食を終えてから街を歩き、十時ごろからブローニュの森へ行く。三方の道から自動車の群が陸続と森の中へ繰り込んで行く。その夥しい車はどこへ向って散って行くのか分らない。森の一隅にある露天のカフェーの上だけは紅の霧を流したようにぼうと明るい。森の中の湖水へボートで出る。真黒な水面を揺れる紅の円い提燈。擦れ違うボートを見るとどれも男女の組だ。提燈のほのかな光りでは顔は見えない。停っているボートは島の木影へ乗り捨てていった客たちのものばかりだ。ぼんやりと待っている空のボートの紅提燈は、カーテンを閉めた窓のようになまめかしい。白鳥がぼとりと重く、暗い水面へ飛び込む。垂れ下った樹の枝が顔を撫でて通り過ぎる。藻の匂いが脂粉の匂いと混って来る。ときどき、男ばかりのボートが黙々として行き過ぎる。何となく粋なものだ。岡本君が手を上げて互に敬意を表し合う。
湖を一周して島へ上る。木蔭を歩きたくなったが水鳥を驚かしてはと、やめて旗亭へ入る。この旗亭では先日コーヒーを飲むとき、落ちかかるマロニエの花を追うのに忙しかったが、今は青葉ばかりが厚く重い。