Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme

Aozora Bunko

「しめた! お師匠さまはあのとおりな鼾、いくらなんでも寝ているうちのことは気がつくまい。どれ、今のうちにおいらの羽をのばしてこようか」

ほそっこい帯をチョコンとむすび、例の棒切れを腰にさして、ゆうべ食べのこした木の芽団子をムシャムシャほおばりながら、猿のごとく荘園をぬけだした。

そのはやいことは、さながら風!

空にはまだ有明けの月があった。あっちこっちの岩穴からムクムクと白いものを噴いている、朝の霧である。竹童のあわい影が平地から崖へ、崖から岩へ、岩から渓流へと走っていくほどに、足音におどろかされた狼や兎、山鳥などが、かれの足もとからツイツイと右往左往に逃げまわる。

いつもの竹童ならば、こんな場合、すぐ狼を手捕りにする、兎を渓流のなかへほうりこむ。とてもいたずらをして道草するのだが、きょうはどうしてそれどころではない。なにしろこれからお師匠さまの朝飯となるまでに、日本国じゅうの半分もまわってこようという勢いなのだから。

「やアどうしたんだろう、いない! いない!」

やがて、瘤ヶ峰のてッぺんにある、天狗の腰掛松の下にたった竹童は、素ッ頓狂な声をだしてキョロキョロあたりを見まわしていた。