Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
三
ここ、いずれも、敵味方三方わかれの形である。
甲を攻めれば乙きたらん、乙を討たんとせば丙突かんという三角対峙。はたしてどんな駈引きのもとに、目まぐるしい三つ巴の戦法がおこなわれるか、風雲の急なるほど、裾野のなりゆきは、いよいよ予測すべからざるものとなった。
けれど、それは人と人とのこと、弓取りと弓取りのこと。晩秋の千草を庭としてあそぶ、鶉や百舌や野うさぎの世界は、うらやましいほど、平和そのものである。
ちょうどそれとおなじように、のんきの洒アな顔をして、またぞろ、裾野へ舞いもどってきた泣き虫の蛾次郎はばかにいい身分になったような顔をして、あっちこっちを、のこのこと歩いていた。
三
「木隠が出立してから、きょうで、はや四日目。――かれのことだ。よも、裏切りもすまいが、なんの沙汰もないのは、どうしたのか。おいとしや、若君のご武運もいまは神も見はなし給うか」
床几によって、まなこをとじながら、こうつぶやいた小幡民部。
ここは、陣屋というもわびしい、武田伊那丸のいる雨ヶ岳の仮屋である。軍師民部は、きのうから幕のそとに床几をだして、ジッと裾野をみつめたまま、龍太郎のかえりを、いまかいまかと待ちかねていた。