Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
三
竹林のやみに、夜の風がサワサワゆれはじめると、昼はさまでに思えなかった水音が、いちだんとすごみを帯びてくる。――ことに今夜は、小屋の灯をともす者もなかった。
星あかりで見ると、その燕作は、水車場のすぐ上の崖に、竹童をかかえたまま、だらりと木の根に引っかかっている。
――ふたりとも、死せず活きず、気絶しているのだ。
すると上の竹の葉が、サラサラ……とひそやかにそよぎだしたかと思うと、笹の雫がそそぎこぼれて、燕作の顔をぬらした。で、かれはハッと正気をとりもどし、むくむくと起きて、闇のなかにつっ立った、――立ったとたんに、笹の枝からヌルリとしたものが、燕作の首に巻きついた。
「あッ――」と、つかんですてると、それは小さな白蛇である。こんどはたおれている竹童の胸へのって、かれのふところへ鎌首を入れ、スルスルと襟首へ、銀環のように巻きついた。
夜はいよいよ森々としている。燕作は、なんだかゾッとして手がだせないでいた。そして、顔のしずくをなでまわした。
と、それはあまりに遠くない地点から、ぼウ――ぼウ――と鳴りわたってきた法螺の音、また陣鐘。耳をすませば、ごくかすかに甲鎧のひびきも聞える。