Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
力なくこういうと、神官の菊村宮内は、天狗の爪からすべりおちるように、よろよろと島のなかへすがたをかくしてしまった。
島にはつつじ、山吹、連翹、糸桜、春の万花がらんまんと咲いて、一面なる矮生植物と落葉松のあいだを色どっている。宮内のすがたは、その美わしい自然に目もくれないで、しおしおと細道をたどっていった。
かれの直垂の袖をかすめて、まッ黄色な金糸雀がツウ――と飛んだ。
と、その向こうには、神さびた弁天堂の建物が見えた。なお、あたりには、宇賀の御社、観音堂、多聞堂、月天堂などの屋根が樹の葉のなかに浮いている。
「宮内さま、もうお午でございます」
社の内から走りだしてきた巫女の少女が、かれの姿をみるとこう告げた。だが、宮内はゆううつな顔をうつむけたまま、
「う、お午か。やめよう、今日はなんだか食べたくない」
とかぶりをふった。ちいさい巫女はそれを追って、
「ですけれど、あの、可愛御堂のなかにいるお方へは、いつものように、お粥を作っておけとおっしゃったので、もうできておりますが」
「お、忘れていた。じぶんの心がみだされたので、ツイそのことを忘れていた。さだめしお腹がすいていよう」