Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
二
「ああ、無念――これまでか」と龍太郎は天をあおいで嘆息した。
と、そのまえへ、ぬッと下から突きだしてきた槍の穂?
「何者?」
と思わず引っつかむと、これは、冷たい雫にぬれた棹のさきだった。龍太郎がつかんだ力に引かれて、まっ黒な水門から筏のような影がゆらゆらと流れよってきた。その上にたって、棹を手ぐってくるふしぎな男はたれ? 敵か味方か、ふたりは目をみはって、闇をすかした。
二
「お乗りなさい、はやく、はやく」
筏のうえの男は、早口にいった。いまはなにを問うすきもない。ふたりは、ヒラリと飛びうつった。
ザーッとはねあがった水玉をあびて、男は、力まかせに石垣をつく。――筏は外濠のなみを切って、意外にはやく陸へすすむ。そして、すでに濠のなかほどまできたとき、
「その方はそも何者だ。われわれをだれとおもって助けてくれたのか」
龍太郎が、ふしんな顔をしてきくと、それまで、黙々として、棹をあやつっていた男は、はじめて口を開いてこういった。
「武田伊那丸さまと知ってのうえです。わたくしは、この城の掃除番、森子之吉という者ですが、根から徳川家の家来ではないのです」
「おう、そういえば、どこやらに、甲州なまりらしいところもあるようだ」