Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
見ると、蛾次郎は、茶碗としゃもじを持ったまま、台の下へもぐりこんで、しきりにへんな目、しきりにかぶりをふっている。
「へえ、おりませんが」
「こまったやつだ……」
と、卜斎は舌打ちをして、
「おれは見ないのでよく知らないが、城内の仲間などのうわさによると、近ごろ、蛾次郎のやつめ、この馬場の近所で水独楽というのをまわし、芸人のまねをして、銭をもらっては買い食いをして歩き廻っているそうだが」
「ははあ……」
と、亭主ははじめて知ったような顔をして、台の下にかがんでいる蛾次郎をちょッと見た。
たのむ、たのむ、たのむよ後生だ。
蛾次郎は台の下で、飯つぶだらけな手をあわせて拝んでいる。と――その時、おりよく宮内が横から立って、
「卜斎どの」
と、声をかけてくれた。
「おお!」びっくりして――
「菊村どのじゃないか、あまり姿がかわっているので、少しも気がつかなかった。どうしてこの甲府へ?」
「でかけましょう、ご一しょに」
「おお、今夜は、わしの宅へきてお泊んなさい」
地蔵行者と卜斎は、肩をならべて、飯屋の軒をでていった。
蛾次郎は台の下からはいだして、
「アア天佑」
お茶をかけて、じゃぶじゃぶと四、五はいの飯をかッこみ、ころあいをはかって、ソッと戸外へ飛びだした。