Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
二
どうか、あれなる咲耶子は縄つきとして自分のほうへ渡されたい」
「いやいや、いかに人間界に化現している身とはいえ、勢至菩薩を縄つきなどになされては、あとの仏罰がおそろしかろう。あの婦人はわれわれ五人へ渡したまえ」
「ふらちな売僧め、文殊菩薩の勢至菩薩のと、だれがさようなたわごとを信じようか。あいや一火先生、ぜひ、咲耶子はこの長安のほうへ」
「イヤ、ぜひともわれわれ五菩薩へ」
「いいや、長安が申しうける」
「なんのだんじて拙僧がもらいうけた!」
双方、いいつのって、鐘巻一火のとばりのまえを一寸たりとひく色がない。
これが、御岳神文の三日でなければ、とっくに、長安も家来に顎をしゃくって抜刀を命じたであろうし、気のみじかい忍剣の禅杖が、ブンと石見守の頬骨をおさきにくだいていたかもしれない。
だが、幸か不幸か、なにしろ、血を見るなかれの場所であり、三日である。
その善と悪たるを問わず、さきに神文の約をやぶれば天下の武芸者にその信を失わなければならない。
で、これはどこまで、押し根気の懸合いだ。
弱ったのは、鐘巻一火。
かれが大久保長安にいったことばは、すこしもうそのないところである。