Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「婆さん、痛いかい?」
のぞきこんだのは燕作である。
蚕婆は、腰をさすって、
「ウーム、痛い」
と、顔をしかめた。
「いまに楽にしてやるよ、おめえだけさきに浜松へ帰るんだ。ご城下にかえれば、湯もある医者もある、なにもそんなに心配することはねえ」
ところへ、ばたばたと足音がしてくる。
葵紋の幕をあげて、あわただしくかけこんできたのは、菊池半助であった。
右のこわきに、咲耶子のからだを引っかかえていた。不意に、当身をうけたのであろう、彼女は力のない四肢をグッタリとのばしていた。
「呂宋兵衛、呂宋兵衛」
「お」
もう一挺の駕籠のなかに、和田呂宋兵衛がかくれていた。ひらりと飛びだして――。
「半助さま、ごくろうでしたな」
「む。いい首尾だったので、なんの苦もなくさらってきた」
「お早いのには、呂宋兵衛も舌を巻きましたよ。さすがは、伊賀者頭でお扶持をもらっているだけのお値打ちはある」
「おだてるな。して、支度は」
「このとおり。なん時でも」
「では、一刻もはやいがいいぞ。おい燕作、ちょっと手をかせ」
呂宋兵衛が身をぬいた空駕籠のなかへ、咲耶子のからだを押しこんで、その、人目につく身なりの上へ、蚕婆と同じくろい服をふわりとかぶせた。