Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.671 Zeichen · 252 Bildschirme
「少しは変なことあったにしても、知恵も腕も人並みすぐれているという主人を脅かすようなことは、何一つありゃしませんよ、長者丸の田圃の上には、白い雲がふんわり浮いて、水田の中の陽溜りには、蛙の玉子が一パイ、――あとは何んにもありゃしませんよ」
「フ――ム」
「ところが、その何んにも無いのが怖いんですって」
「?」
平次はヒョイと顔を挙げました。豪士と言っても、腕にも知恵にも不足の無い五十八歳の男、村越峰右衛門なる人物が、「何んにも無い」のが怖いでは話の筋が通りません。
「最初は矢文は飛んで来たそうですよ、何処からともなく白羽の箭が一と筋、真夜中に濠を越え、塀を越え、庭を突っ切って、二階の主人の奥部屋の戸袋へ、ザブリと突っ立って居ました、――それはもう半年も前のことだった様です」
「手紙でもついていたのか」
「白紙の手紙が、結び文になって、矢尻に結んでありました、――何んにも書いて居ないのが、妙に淋しかったと、主人の峰右衛門は言います。例えば金を出せとか、何んとかをしろというのなら、随分相手の申出通り出来ないことも無いし、その文面の様子では、相手の見当も、怨みの深さもわかるのに、白紙を結んであったのでは、その見当をつけようも無い――」