Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.082 Zeichen · 257 Bildschirme

Aozora Bunko

「その人なら、お勝手口へ来ましたよ」

隣の部屋から応えたのは、平次の女房のお静でした。

「何んだ、お前が承知して居たのか、それならそれと早く言えばいいのに」

「でも、何んにも言わずに帰ってしまったんですもの、私はびっくりして追っ掛けて見ましたが、八五郎さんが向うから路地へ入って来るのが見えたんで、あわてて戻ってしまいました。私まだ、変な格好をしているんでしょう」

朝の仕度がおくれて、お静はまだ髪も直さず、帯もよくは締めていなかったのです。

「仕様がねえなァ――本当に何んにも言わなかったのか」

平次は大きな舌打をしましたが、帯ひろどいて、若い娘を追っ掛けなかったお静のたしなみまでは小言も言えません。

「人の影が射したんで、覗いて見ると、戸袋の陰にしょんぼり立って居るんです、八さんの言う通り、それは可愛い娘でした。何んか御用? と訊くと、アノー、アノーとくり返して言うだけ」

「で?」

「水下駄を突っかけて側へ行こうとするといきなり逃げ出すんですもの、私はもう」

お静はやるせない胸を抱くのです。

「八の岡惚れの人別帳になくたって、それだけのきりょうなら、又めぐり逢わないものでもあるまいよ」