Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.082 Zeichen · 257 Bildschirme
三
「正直でいいな、お前は、毎日その一枚絵を抱いて寝るのか」
「抱いてなんか寝やしません、枕の下へ敷いて寝るんで」
「まるで宝船だ」
「あまり結構な夢も見ませんね」
「当り前だ」
話は際限もなく馬鹿々々しい調子になります。が、この市井の一些事らしい「揚羽のお艶」の噂が、飛んだ凄まじい事件に発展しようとは、銭形平次も思い及ばぬことだったに違いありません。
三
八五郎の「大変」が、つむじを起して舞い込んだのは、それから十日位経ってからでした。
「さア、大変、親分」
井戸端で顔を洗って居る平次は、猿屋の房楊子を井戸側の割れ目に突っ立てて、静かに振り返りました。
「悪い陽気だ――今時分から、お前の「大変」が降るようじゃ」
「霙と間違えちゃいけません――兎も角、直ぐ行って下さいよ、親分」
「何処へ行くんだ、俺はまだ顔も洗っちゃ居ないぜ――袖を引張ったって、無理だよ八」
「でも、今直ぐ行けば、揚羽のお艶の顔が拝めて礼の一と言位は言わせますよ」
「止さないか、馬鹿々々しい、俺は今朝滅法寝起が悪いんだ」
無駄を言いながらも、平次は手早く顔を洗って、さてと向き直ります。
「本当に大変なんですよ、親分」