Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(八) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.604 Zeichen · 391 Bildschirme

Aozora Bunko

四

草、燃え出さないものはなかった。

四

魏の兵は大半焼け死んだ。火に狂う奔馬に踏まれて死ぬ者もおびただしかった。火焔と黒煙の谷の底から、阿鼻叫喚が空にまでこだました。

この有様を見て、

「計略は図にあたった。さあ、立ち退こう」

と、心地よげに、谷口へ向って行ったのは、司馬懿軍をここへ誘い入れた魏延だった。ところが、すでに谷口はふさがれていたので、その魏延までも、逃げる道を失ってしまった。

「これはひどい。俺が出た合図も見ぬうちに、谷口をふさぐとは何事か」

魏延はあわてた。彼の部下も火におわれて、次々に仆れた。彼の甲にも火がついてきた。

「さては、孔明の奴、日頃の事を根に持って、俺までを、司馬懿と共に殺そうと計ったにちがいない。無念、ここで死のうとは」

彼は、髪逆だてて、罵りやまなかった。

その頃、当然、谷中は熱風に満ちて、はや生ける人の叫びすら少なくなっていたが、司馬懿父子は三人ひとつ壕の中に抱き合って、

「ああ、われら父子もついに、ここで非命の死をうけるのか」となげきかなしんでいたが、なおこの父子の天運が強かったものだろうか、時しも沛然として大驟雨が降ってきた。