Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「じゃあ、見ていて御覧!」
多計代は、嬉しそうな、挑むような声を出した。
「もし本当にそんな人だったら、私はあのひとを見あげるよ。どんなにでもして私の不明を謝そう」
――伸子は、いやな心持になって黙った。つい本気になっていろいろ話した自分の浅墓さが不快になった。一人の人間の、生き死にを、このようにして話すのは恐ろしいことだ。伸子は、小夜着を顎の下まで引きあげて寝がえりをうった。多計代は、伸子が眠たくなったのだと思ったらしく、
「――そろそろ寝ようかね」
と欠伸まじりに呟いた。
「空気がいい故と見えて、こっちへ来たら不眠なんぞすっかり忘れたようになってしまったよ」
「…………」
「じゃあ、おやすみ」
「――おやすみなさい」
十分もしないうちに、母の苦のなさそうな平らかな寝息が聞え始めた。多計代は、伸子が久しぶりで自分と数日暮していることで満足しきっているように見えた。伸子がどんな心持で来ていようとも。伸子は、目をあいたなり、ただ一つの細い寝息をじっと聴いていた。その音に引かれ、洪水のような周囲の闇や先刻からの渋い気持が、規則正しくさしたり退いたりするようだ。彼女は、そっと寝床を出た。