Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
市十郎とお袖のまわりに六、七名もの顔が、屏風囲いになり、その中に、一きわ幅の広い顔を持った主の化物刑部の眼が、市十郎の姿をとらえて、またたきもせず見ていた。
「阿能。――こいつか、市十郎というのは」
「そうです。どうしてここへ来ていたか」
「まあ、いい」と、刑部は大きくゆるすような頷きをして――
「ひと目見たら、気がすんだろうし、かえって、これで片づいたというものだ。……おい」
と、うしろの連中をふり向き、顎を上げて、いいつけた。
「こいつを、つまみ出せ。二度と、寄りつかねえように」
それからの狼藉は、お袖にも見ていられなかった。市十郎はたちまち連中の私刑にかかった。土蔵梯子を引きずり降ろされ、外へ出てからも、ふくろ叩きの目にあった。そして裏門か表門かわからないが、とにかくこの荒れ屋敷から正気もなく突き出された。
それから。どれほどな時が経ったか――彼には、はっきり意識がない。
……ふと、気がついた。
われに返ってみると、自分は、真っ白なものの中に俯ッ伏していた。白いものは、手も袖も胸も埋ずめていた。身をうごかすと、髪の毛からも肩からもサラサラ落ちた。すべて、真っ白なものだった。